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④
「いえいえ。私の監督不行き届きで、本当に申し訳ございません……。康太君にも、きつく注意しておきましたので……。近く謝罪したいと、康太君のお母さんもおっしゃっておられました」
「ありがとうございます。でも、子供の喧嘩だから、しょうがないですよ」
「……本当にすみません」
「いいですって。ね、春香、もう大丈夫でしょ?」
「うん!」
春香は私の腕をつかんだまま、元気よく返事をした。
「それじゃあ、そろそろ帰りますね。行こうか、春香」
「はーい」
私は春香の手を引き、駐車場へと急いだ。
途中で春香が「あんなに怒ってた小春先生、初めて見た。康太君、可哀そうだった」と言った。
ちらと振り返ると先生がまだ頭を下げていた。
帰りの車中、私はもやもやとした思いを心の中に持て余していた。
後部座席を振り返ると、チャイルドシートの上で春香がウトウトとまどろんでいた。
私はきっと、怒るべきだったのだろう。しかし、怒りたくても、怒れなかった。先生だって、子供全員のことを見てはいられない。
それに、他の子をからかうことだって、子供ならば仕方ないし、それに対して怒った春香も、もちろん悪くない。
強いて言うならば、こういった状況になったのは夫が亡くなったせいだが、それこそ誰が悪いというわけでもない。
そんなことを考えていると、再び頭の中で声がした。
『時間が無いんだ。早く見つけてくれ』
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