チーズがとける夜には

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「見て見て!すんげぇ伸びる~!さすが4種のチーズだわ!」 「いや、何種類かは関係ねぇだろ…ピザのチーズはだいたい伸びるもんだ。」 「美味いわぁ~!めちゃくちゃ美味いわぁ~!」 深夜0時。人の話も聞かずに美味い美味いと言ってピザを食べるこの男とはもう15年来の付き合いだ。 「圭ちゃんありがとね!俺の願いを叶えてくれて!やっぱり圭ちゃんはいつだってさ、俺ん中で最強だわ!」 「はいはい。おまえはいつだって、自由で楽しそうで羨ましい限りだよ。」 「うん!ありがとう!」 いや、褒めてないっての。それにピザ頼んでやっただけで大袈裟だ。 「おまえさぁ…本当変わんねーな。どうしたらそんなに変わらないで居られんの?」 「えー…???人ってそんなに変わるもんなの?」 「そりゃぁ、多少は変わるだろう…取り敢えずアラサーんなってこんな時間にピザのLサイズを全部は食えねぇわ。おまえの胃袋どうなってんだよ。」 「はぁー…美味かった。チーズ最高。あ、圭ちゃんごめん…お茶下さい。」 また話を聞いてねぇ。まぁいい、いつもの事だ。俺は呆れ顔で立ち上がると麦茶を入れに冷蔵庫へと向かう。ついでに俺も缶ビールをもう1本取り出して戻る。実はもう2本空けている…今日はとにかく最悪な一日で、いつもは金曜の夜に誰かに誘われた時にしか酒は飲まないのに、帰り道にコンビニで缶ビールを3本も買って、1本は店を出てすぐに一気に飲み干した。酒は嫌いじゃないけどそんなに好きでもない、けれどどうやら強いようでいつもどんなに飲んでも一向に酔えない。それに比べてこの男はアルコールを一切受け付けない身体で、20歳くらいの時に一緒に働いていたバイト先の打ち上げでみんなに煽られてレモン酎ハイを一口飲んだだけでぶっ倒れた。その後介抱したのも連れて帰ったのももちろん俺だ。 「そういや、今日のんちゃんは?前に水曜が休みだって言ってなかった?」 「うん。休みだよ。もう寝てるんじゃないかな~。のんちゃんて早寝でしょ?いつも23時までには布団に入ってるから。」 でしょ?って聞かれても俺はのんちゃんの睡眠事情までは知らねーわ。
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