バレないもどかしさ

「それくらい分かってる」

昔と変わらない口喧嘩は、楽しいときもあれば、そうじゃないときもある。しかも大抵俺がやりこめられるので、起死回生と言わんばかりに責めてみた。

「今度からは、座って食べろよ」
「どうぞ、お礼したげる」

ここぞとばかりに責めたというのに、目の前に差し出された、食べかけのホットドッグ。

「お礼？」

（これって、間接キスになるのでは!?）

「遠慮せずに食べなよ」

ベンチから立ち上がり、口元にホットドッグを押しつけてきたので、思いきってかぶりついた。

「美味い」

恥ずかしさや照れが頭の中を支配するせいで、味なんてものを感じる余裕はない。

「でしょう？ 」
「うん」
「だけどアンタ、おっきな口で噛みついたから、口の端にケチャップついてる」

そりゃあ格好悪いと、後悔した瞬間だった。