大好き、だから

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『――緊急連絡! 各自応答せよ!』  勇樹が所属する魔物討伐隊のリーダーから念話が届いた。  それは、珍しくもない出撃命令だったが、内容を聞いていくうちに、次第と勇樹の表情が強張っていく。  最後まで聞き終えると、勇樹は由紀に向き直った。  そして、穏やかな笑顔を無理矢理作りながら告げる。 「ごめん由紀。先に帰ってて」  それを聞いた由紀は、その水晶のように透き通った瞳を勇樹へ向けた。何を言うわけでもなく、何を考えているのかも分からない。  だが、いつものことだ。  勇樹は、いつしか彼女を守ることが自分の使命だとさえ思うになっていた。 「それじゃあ、ちょっと行ってくるね」  勇樹が儚い笑みを浮かべ、由紀に背を向け歩き出そうとする。  だが、小さな力が勇樹の右袖(みぎそで)を引っ張った。  彼が目を見開き振り向くと―― 「――やだ。行かないで……」 「……由、紀? 急にどうしたの?」  初めてのことだった。  普段は冷たい表情で無口なあの由紀が、今は瞳を揺らし、声を震わせている。  彼女は手のひらをギュッと握りしめ、何かを決心したかのような、力強い意志を瞳に宿した。 「だって――」
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