大好き、だから

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 ――ドクンッ (はは、はははははっ。僕の大バカ野郎。最後に何てこと思い出すんだよ。そんなこと思い出しちゃったらさぁ――) 「――もう、死ねないじゃないかぁぁぁぁぁっ!」  勇樹は精神力だけで立ち上がる。そこには理屈などなにもない。  「生きて由紀の元へ帰る」、その強い想いだけがあった。  無情にも、勇樹の動きにいち早く反応したドラゴンがいた。それは、すぐさま口を大きく開け、羽ばたきながら勇樹へと迫る。  次の瞬間―― 「――ギャオォォォォォンッ!」  轟いたのはドラゴンの断末魔だった。 「そういうことだったのか」  呟いた勇樹の手には巨大な剣が握られていた。それは伝説に登場する『竜殺しの剣』。  それこそ勇樹の真の力だ。  彼の能力は、ホットドッグを生み出すことなどでは断じてない。  その力の本質は、彼の強い願いに対して、あらゆる生物の本質、思考、万物流転に干渉し、最適解を導くこと。  つまり今、勇樹の「生きて由紀の元へ帰る」という強い願いによって『竜殺しの剣』が具現化したのだ。 (ようやく、ホットドッグしか出せない理由が分かった)  それは由紀の好物だったから。  彼の「由紀を喜ばせたい」という願いが生み出した産物だったのだ。
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