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 賢治は反射的に雲雀(ひばり)の頭部を見たが、事故の跡はまったく見当たらなかった。どことなく澄ましたような表情の可愛らしい姿の小鳥だ。 「生きてた姿に戻さねばならんと思ったんだ」  祖父は低い声でそう呟くと、まだ解体を終えていない(たぬき)の頭を優しく撫でた。  (よわい)を重ねた祖父の手はごつごつとして浅黒く、深い(しわ)がいくつも刻まれている。それはまるで、大樹(たいじゅ)の老木のような温もりに満ちていた。
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