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「あっ」  その瞬間、賢治は自分が声を発したことに気がつかなかった。目にした光景の意味がすぐに飲み込めず、心が騒ぐ。  そこに見たものは、野生の躍動(やくどう)であった。  野を駆ける鹿の節奏(せっそう)。色鮮やかな羽を広げ優美に魅せる(きじ)の風格。愛くるしい兎が跳ね、孤高(ここう)の鷹が獲物を狙う。  剥製(はくせい)。  まさに刹那(せつな)の瞬間を切り取った永劫(えいごう)の世界が、賢治の視界に飛び込んできたのである。
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