彼ら 時の深淵より

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「暗黒海淵とはパンゲア大陸に面した海のことだ。当時、この天文台は地球外知的生命体とのコンタクトを研究していた。信じられないだろうが、天文台のスタッフたちはパンゲア時代の二つの生命体と遭遇したのだ。ひとりは暗黒海淵の漁師と名のり、もうひとりはパンゲアのモヤイだといった。彼らは我々の想像を絶した方法で、2億5千万年前の超古代からアクセスしてきた。はるかに優れた文明の力をもってしても、<それ>は阻止でなかったということだった」 「つまり、2億5千万年後の人類に対して警鐘を鳴らした? <それ>は、まさか恒河紗見聞録と関係があるとか」 「そうだ。恒河紗見聞録を単なる天変地異の記録だと思っていると、とんでもない事になるぞ。来たまえ」  大尉は部屋の奥へ案内した。突き当りにカーボン合金製の扉があった。大尉は暗証コードを打ち込んだ。  扉が重い音を軋ませながら開いた。  奥深いところまで長い通路が伸び、あたりは死んだような静寂に包まれていた。暗い作業灯が平坦な床を鉛色に照らしている。取り囲む壁面は円筒の連続で、どこまで行っても同じ風景だった。 「このあたりには、滅多に来ない」  大尉は何か目に見えないものに怯えているように声をひそめた。  その通りだろうと、阿僧祇は思った。自分が本当のが殺人犯ならしかるべき収監施設に連行されるはずだが、ここは阿僧祇が知っている保安局官舎の内部ではない。
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