彼ら 時の深淵より

12/16
前へ
/16ページ
次へ
「この部屋だ」カーボンチタニウム製の頑丈そうな扉の前で大尉が立ち止まった。「この中に2億5千万年前がある・・・まあ、ほとんど溶けてしまってるがね」  扉が開くと、より強烈な消毒臭が鼻をついた。  化学実験室のような造りになっており、その奥に三方一メートルくらいの透明な立方体が台座の上に置かれていた。立方体は二つある。  そこには二つの個体がいた。それが人間なのかどうか、すぐには判断できないほどいびつで腐敗がすすんでいた。  阿僧祇は悲鳴を漏らしそうになった。恐怖、驚愕、吐き気。どれにも当てはまらない感覚感情だった。細長くて座高の高いヒトが腰かけている全身標本だろうか。衣服の類は着けておらず、皮膚とは判別しかねる褐色のうろこ状の甲殻に覆われている。胴体、頭、手足の部位はヒトと変わらないように思えた。  これがパンゲア大陸時代の人類? 周知のとおり、パンゲア大陸は現在の地球を構成するユーラシア大陸、アメリカ大陸、オセアニア大陸、アフリカ大陸、南極大陸の原型と云われている。つまり、2億5千万年前の地球の陸地は一つにまとまっており、地球的規模のプレートテクトニクスで現在のかたちになった。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加