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「俺は保安局災害調査部のサウスウェスト大尉。さて、話してもらおうか。どういう状況だったのか、何もかもだ」
阿僧祇が手錠をガチャつかせると、大尉は苦笑いした。
「きみは容疑者だから手錠を外すわけにはいかん」
阿僧祇は那由多山の自然保護管理と恒河紗見聞録の調査を何年も前からやっていた。見聞録の方は、先史文明物理学研究者の青蓮華楓子と共同で文献集めをしたりその信憑性を検証していた。
「それを調べるためにロッククライミングを?」
大尉がきいた。
「いや。たんに岩登りを楽しむためですよ」
「亡くなった銀毘沙鳳太さんとはどういう関係? 彼はどんな仕事を?家族はいたのかな」
「幼馴染みの友人ですよ。仕事は滑空機の整備士。妹が南関東地区に住んでる」
「つまり、休日にロッククライミングを楽しんでいたら、岩が溶けて穴があいて、そこから噴き出した白い液体に弾き飛ばされたというわけだな。友人は整備士をしていて、妹がいるということか。そもそも恒河紗とはどういう意味だい?」
大尉は神妙な顔つきで阿僧祇をのぞきこんだ。
「恒河とは大宇宙の星雲群が河のように見えるたとえ、紗は布の意で、それが帯のように広がって森羅万象を溶かしていく・・・」
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