1.須く没収

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1.須く没収

 僕の通う中学では、バレンタインの日にチョコを持ってくる事は固く禁じられている。  本日、2月14日。  つまりバレンタインというこの日は、風紀委員である僕が昇降口に立ち、登校する生徒のバッグに目を光らせなければならない日でもあった。  ……とはいえ、例の規則は生徒全員に知れ渡っており、チョコの贈与を画策する女子の中でも現物を直接学校へ持ってくるなどという下手を打つ者は実際には皆無に等しい。  没収なんかされてしまった日には内申や評定にも響く上、チョコを渡せなくなる危険性もある。  だからこの日も、バレンタインとは無関係な代物を没収される間抜けな輩がいても、チョコを没収される生徒など一人もいない……  かと、思われたが── 「……ダメだ。没収」 「あびょっ!」  たった一人だけ、チョコをバッグの奥底に忍ばせた女子がいた。  しかもそれは、事もあろうか僕と同じクラスの胡桃(くるみ)(ざわ)(もも)()だった。  彼女はもはや奇声としか言い様のない驚嘆を発すると、残念そうな顔をし盛大にぼやいた。 「え~~。ホントにあるんだ、こんなルールぅ~」と。
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