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……きっと、由伸があそこで寄り道をしているのだろう。先ほど弟を乗せたタクシーが、山を下っていったのを由香子は思い出した。麓の民芸茶屋の囲炉裏で、川魚を焼くようす、火が魚を焼くようす、その火が燃え盛るようすを、由香子は脳裏で再現させた。
由香子が頬を赤く染めた。魚を炙り、焼け焦がしてゆく炎の姿が――火柱を勇ましく立たせ猛然とそそり立つ炎の姿を夢想すると、彼女は欲情し、股の奥が湿った。
由香子は室内に振り向くと、火が入っていない薪ストーブを凝視した。まるで愛しい人を見つめるかのようにーー
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