カップ麺に捧ぐ

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俺は組織の人間を撃ったのだ。銃弾を喰らったそいつが、生きているのか、死んでいるのか、そんな事、俺に分かろうはずもない。 ――死んだだろう。 きっと、組織の人間は死んだのだ。 俺は、裏切り者だ。組織を裏切った者の頭上に、沈んだ太陽は再び昇らない。俺はきっと、今日という日を生き抜く事が出来ないだろう。明日になれば、俺はきっと生きてなどいないに違いない。 ――俺の右手が。 人を殺害した俺の右手がいま、カップ麺のビニールを素早く剥ぎ取っている。人を撃った右手で、カップ麺の蓋を半分剥いだ。カップ麺をテーブルに叩きつけるようにして置いた。半月形の隙間から、乾燥した麺が覗き、俺を冷たく凝視している。
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