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『あの、ハンカチ落としましたよ。』
振り返るまでもなく、その透き通るような声で清楚感が伝わってきた。
僕はソレを悟られないよう気をつけながら振り返った。
写真で確認した女性がそこに立っていた。
いや、ここまで写真映りが悪い女性がいることに驚いた。
依頼を受けた際、綺麗な女性だなとは思ったが、ここまで綺麗な人だとは思わなかった。
後で依頼人に苦情を入れる事を決めた。
『あ、すいません。』
僕は声をうわずらせながら言った。
女性はハンカチを丁寧に折りたたみ僕に渡してくれた。
『綺麗なハンカチですね。』
女性は微笑みながら少し嬉しそうな表情を浮かべた。
依頼人からの情報通り、大好きなブランドのようだ。
『ありがとうございます。僕、このブランド大好きなんです。』
ワザとらしくないよう心がけた。
『私も好きなんです。柄が繊細で。』
女性の口から繊細と言う言葉が出た時、僕は初めて繊細の意味を知ったような気がした。
『それじゃ。』
女性は軽く会釈をして駅のホームへと歩いて行った。
第一印象は申し分のない完璧な女性という感じだった。
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