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『港区立青山中学校VR eスポーツ部、部員募集!
男女の別なく、年齢の別もなく、体格の別もない。
人である限り誰もが同じフィールドで対等に戦うことができる。
そんな夢のようなスポーツが、この世界には存在する。
そのスポーツの名はeスポーツ。
コンピューターの発達に伴い可能となった電子機器を介して行われる競技、いわゆる、対戦ゲームである。
eスポーツの競技人口は二〇三九年現在、全世界で一〇億人を超える。
これは野球やサッカーのような電子機器を介さないスポーツから、チェスや将棋のようなボードゲームまで含めたありとあらゆる競技の中で、最も大きい数字だ。
地球で一番人気があるということは、このスポーツでチャンピオンになれば地球で一番のカリスマになれるということ。
地球の主人公になれるということ。
主人公になろうとするのに理由なんてない。
この部に入って、私と一緒に地球の主人公をめざそう!
(四月十五日午後四時から入部希望者向けの体験会をやります。興味のある方はぜひ部室へ来てください)』
いちばん下に体験会の日程が新たに加筆されてる。
「このチラシを、配ったり校舎の壁にはりつけたりすることでメンバーを集めようって作戦なわけか……なるほどな。いや、いい考えだと思うよ」
「でしょ」
さっきのように偉そうに腰に手を置きつつ、ゆめは口角を上げた。真夏のヒマワリを思わせる屈託のない笑顔が弾ける。
「体験会を一五日にやるって書いてあるけど……今が七日で、人間将棋のプレーをするために必要な人数があと七人……まにあうのか?」
「まにあうことを信じて、明日学校中にチラシを貼るしかない」
「まあ、そりゃそうなんだけど……」
「青迫くんって見かけによらず慎重なのね……心配しなくてもくるよ。新年度なんだし」
ゆめはウインクしながら、また立てた親指を駈の胸元へグッと突きだしてくる。
「俺が慎重っつーか、春瀬が楽観的すぎるんじゃねえの」
「私が体験会を一五日に設定したのは、楽観的な人間だからじゃない。新一年生が学校へなだれこんでくる新年度は同じ学校の全部活のあいだで部員の取りあいが起こるから、私はそのレースで後れをとるわけにはいかなかったの」
港区立青山中学校VR eスポーツ部ってのは現時点で存在しない部だ。にもかかわらず春瀬は、この学校の全部活動の間で繰りひろげられる新一年生獲得レースに堂々参戦しようとしてるってのか。正気の沙汰とは思えん。
「港区立青山中学校VR eスポーツ部はもともと、強豪にして名門だったんだから。同じ学校の他の部になんか負けてられない。負けるどころか、ぶち抜かなきゃいけないのよ」
宣言するやいなや、ゆめはドヤ顔で拳を天に突きあげた。駈は呆れたように肩をすくめる。
リア充の行動力おそるべし……だな。
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