熱波の序曲

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あ!! 団扇と柄杓を持った人が入って来た。 柄杓に液体をいれて、ストーブの上に積まれている石にかけた。 ものすごい水蒸気が発生し、湿度が上がっていく。 液体に含まれたアロマの香りが室内に充満する、 ロウリュと言われるサービスだそうだ。 いきなり私目掛けて団扇を振り回す。 熱波が襲ってきた。 熱い!!!思わず声が出た。 しかし常連たちは平然としている。 むしろもっと熱波をリクエストしている。 雰囲気が一変した。 裸の大人が大騒ぎしている。 競い合うように熱波を求めて騒いでいる。 勢いをました熱波が繰り返される。 さっきまでの静けさは吹っ飛んでいる。 先ほどまでの静けさは嵐の前の序曲(プレリュード)だったのか? 汗が全身から吹き出てくる。 次々と液体が追加され、湿度がどんどん上がって行く。 理論的には室温は下がっていくはずだけど、体感温度は100度を軽く超える気がする。 体が溶けるような感じがする。 とうとう周りの人達が一人一人と部屋から出ていった。 中には飛び出して行く人もいる。 私はまだ大丈夫だ。 ナントナク勝った気がする。 ・ ・ それもつかの間だった。 私にも限界が訪れた。 さすがに熱さに耐え切れずに、無念だが部屋から出してしまった。 「お疲れ様、さあ次だ」 下の段にいた彼が呟いた。
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