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椅子の調和(ハーモニー)
「ゆっくりと立って落ち着いてから給水機で水分を補給して、体をよく拭いてから来なさい。足元に注意して!」
言葉の意味はすぐに分かった。
浴槽から出てみたが、頭がクラクラを通り越して半ば目眩がしてすぐには動けない。
もう少し入っていたら、ヤバいかも知れなかった。
意識はあり、感覚はとても気持ちいいのだが、思うように体が付いていかない。
転倒しないようソロソロと歩いてようやく給水機までたどり着いた。
普通の水が五臓六腑に染み渡る。
まるで甘露のようだ。
たらふく飲んだ。
頭がスッキリして足取りが少し軽くなった。
これならついて行けそうだ。
だんだん彼がただの裸の世話焼きとは思えなくなってきた。
今なら何でも従ってしまう。
やっと外にいる彼に追いついた。
「そこの椅子に座りなさい」
露天風呂の横に並んでいる椅子を指差した。
見るからに変哲のない極普通の椅子だ。
特殊な機能のカケラも感じない。
ほぼ満席に近かった。
大の大人が裸でならんで静かに座っている傍からみるとかなりシュールだ。
幸い1席空いていた。
座って目を閉じてみた。
驚いた。
椅子が体に吸い付くようにフィッティングする。
まるでオーダーメイドしたように・・・
逆か、体が椅子にマッチングする。
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