熱波の序曲

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熱波の序曲

疲れた。 とにかく疲れた。 本当に疲れた。 どうしようもなく疲れた。 気は沈み、心は荒み、体は重く、家庭や仕事のことは勿論、見えるもの聞こえるものが全て煩わしく疎ましく思える。 そんなある日、ネットで「病んだ体と心が簡単、しかもあまりお金がかからずにに再生出来る」 と言う記事を見て、そこを訪ねてみた。 正直半信半疑だった。 ここにそんな効果があるとは到底思えなかったが、藁にもすがる思いだった。 そんな夢のような所は?? 郊外にある日帰り温泉だった・・・ 入場料金は750円、浴室と食事処、休憩室は滞在中出入り自由。 確かにお金はあまり掛からない。 そこで彼に会った。 と言うか一方的に話掛けて来た。 自身満々に上から目線で語るその姿は、裸ということもありあまり気分のいいものではない。 「まず体を隅々まで綺麗に洗いなさい。 水分補給も忘れないように。 緊張することはない。 決して特別な事はしないので安心しなさい。 水滴を全て拭って、そこの部屋に入りなさい」 とりあえず言われるがままに従ってみよう。 何か知らなかった特別な設備があるのか? 部屋に入った。 部屋とは? サウナ室のことだった。 最大30人くらいは入れる少し広めの部屋だった。 熱い! 薄暗く、熱い場所。 大きなストーブがあり、室内は90度を超える熱さで満たされている。 席は階段状になっていて3段まである。 初めの時は下の段がいいと思う。 当然上に行くほど室温は上がる。 最上段には常連と思える面々が所狭しと並んでる。 目がドアを早く閉めろと訴えている。 大人しく座るとするか。
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