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「授業、終わってるから早く帰ればいいのでは?」という発言をしようとしたのだが、彼の目的を知っている雪羽はそこまで冷たい女ではない。
なにより彼女自身、冷たい心は持っていないと、そう自負している。
「それじゃ、一緒に取りに行こ?」
雪羽はそう言い放った。
「いいのか?」
「うん。どうせ帰り近いし……ね?」
「本当にいいのか?」
「うん。本当に」
才人は心の中で涙ぐんだ。
なんて優しい女だと。
「ねえ」
隣を歩く雪羽は声をかける。
「なんだ?」
「本当にわたしは超能力者なの?」
雪羽は率直な疑問をぶつけた。
傍から見たら、ただの電波な人間にしか見えないのだろう。
「どうやら上の者がそう言っていた。俺もそう指示されて君を護衛している」
「そうなんだ」
雪羽は空を見上げた。
「いまいち実感ないな」
「そうだな。君を見ていると特に特別なものを感じない。もっとストイックな人だと思っていたがそうでもないしな」
才人がだらだら言葉を並べると、雪羽は軽く睨みつけた。
「ただ話題に乗ったふりして悪口言っているようにしか聞こえないけど……まあいいわ。なにか特別な力っていってもあまり嬉しくないし」
「そういうものなのか? 普通嬉しいと思うが」
「だって、そういうの邪道じゃん」
「邪道……」
「うん。そう」
二人が話をしているうちに、ある建物に近づいた。
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