彼は変人?

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 小町高校から離れ、二キロほど離れている才人のアパートだ。 「ここが才人の家なんだ」  雪羽は築四十年近いアパートをじっと眺めていた。かなり年季の入った建物であり、地震があると即座に潰れてしまいそうな建物だった。  コンクリート造ではなく、木造・軽量鉄構造である。  ここで一人暮らししていると聞くと、なんだか勝手ながら寂しい気分を得てしまった。 なんか、かなり失礼なこと言っているような気がする。 雪羽は、才人に見えない程度に頭を振るった。 「そうじっくり見られると困る。正直褒められた家ではないのだから」 「ご、ごめん」  雪羽は才人に向き直って、謝った。 「いや。マンションより家賃が安いんだ。オンボロと思われても仕方ないさ。君の護衛任務に支障なければ問題ない」 「一人で暮らして寂しくない?」 「特に。不自由はない。強いて言うならば防音性が低いことだな。細かくいうならば他にも換気扇などの設備が不備で困るぐらいだ。まず一人暮らし云々の前に設備が寂しい」 「そ、そうなんだ。てっきり一人暮らしだから寂しいと思っちゃった」 「寂しくは……ない」  才人は一瞬だけ考えたが、すぐに取り消した。  俺はここの、人間、ではないのだから。     
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