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「以前、君は俺にこう尋ねてきたな。まるで違う異世界から来た住人のようだって」
「そ、そうだっけ?」
雪羽はバツ悪そうに顔を背けた。
「別に過去を掘り返して文句を言っているわけではない。実際、俺は……」
そう言いかけた瞬間。
一つの銃声とともに、才人の後ろの木が崩れ落ちる。
木は目の前に倒れこんでいた。
こんなところで発砲など、素人の考えではないのか? そう頭に過る。同時に強力な火力を施した拳銃でも持っているのか。
それとも……あれを持ってきたのか?
だが、思考の邪魔をするように、次の銃声が聞こえる。
「伏せろ!」
「えっ、ちょっと! なに!?」
才人は雪羽を押し倒すように庇う。
雪羽が頬を赤くしているのを無視して、才人雪羽の腕を掴む。
「こっちだ! ついてこい」
「どこにいくの? 才人の家、ここじゃないの!?」
無論、状況はわかっているものの、つい言ってしまう。
「見た通り俺の家には何も手段がない」
そう言って、才人は自分のアパートを通り過ぎて、無心に低姿勢で雪羽を庇いながら奥の道へと進む。
敵は見えない。
だから、余計に立ち悪いのだ。
「もう銃声聞こえないよ!?」
少し息切れしたような声で言う雪羽。
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