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──ソレは、長い草に身を隠しながらも澄んだ甲高い音を微かに響かせてその丘にあった。淡く青白い光をまとい、真昼でも深淵に潜む闇の恐怖を掻き立てる。
鋭い刃はかつての主人を守るかのように見知らぬ人骨を脇に抱き、真っ直ぐに大地に突き立てられていた。
風に乗せれられた声のようにか細くぼんやりとした耳鳴りが、次の主人を求めるように丘を広がってゆく。
柄の宝石はどこか怪しげな影を潜ませ、人の闇を引きずり出すかのごとく静かな輝きを放っていた。刃に刻まれた古の文字は何を表しているのだろうか。
去りゆく日々のなかには、崇められていた神や王がいただろう。しかしそれらは長い刻の間に伝える者は潰え、この刃と同じく人の記憶の中に埋もれる事すら許されなかった。
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