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喫茶・止まり木
騒がしい都会の喧噪が閑静な住宅街に移り変わっていくちょうど半ば辺りにある駅を降りて、歩くこと約八分。
道行く人通りも疎らな細い通りに、その喫茶店はある。
生真面目な四角い楠木の無垢材に、これまた面白みのない明朝体で書かれた「止まり木」という看板。
少し軋む古ぼけた扉を開けて店内に入ると、これまた時の流れから置き去られたような、どこか懐かしさを感じる古くさい喫茶店の風景が広がる。
ウォールナッツのテーブルに少し堅めの赤いビロードのソファー椅子。
慌ただしい都会のカフェと違う、ゆったりと過ごせる寛ぎの空間が演出されている。
店内に薫る珈琲の香りと、微かに流れるジャズの音楽。
壁掛けの振り子時計を見れば、時刻は二時ちょうど。
店内にいるのは、カウンター席に座る女性客が一人と、その正面にいるマスターだけ。
マスターは、二十代半ば、さらさらの髪に知的な眼鏡をかけた芸能人のように端正な顔立ちの男性だ。
アイロンがけされたパリッとした白ワイシャツに黒いエプロン姿がスマートで、年齢以上に落ち着いて見える。
サイフォンで珈琲を淹れる姿は、雑誌の写真を切り抜いたかのようで、思わず見入ってしまう。
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