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台所貯金にいくら入っていたのかは知らないけど、最近その貯金で新しい冷蔵庫を買ったって言ってたし、相当な額だってことは分かる。
「はやいな、もう着いちゃった……」
私はため息をひとつつくと、家に入った。
「ただいまー」
「おかえり、奇子。あらあら、随分と重そうね」
お母さんはにこやかに出迎えてくれる。1年ぶりに会うけど、白髪が前より増えてる。それでも老けたという印象はなくて、グレイヘアがよく似合う上品なおばちゃまって感じ。
「ちょっと予定より買いすぎちゃって。ご自慢の冷蔵庫、さっそく使わせてもらおうかな」
「ふふっ、使ってちょうだい」
お母さんは嬉しそうに言うと、急かすように私の手を引っ張る。
台所につくと、大きなネイビーの冷蔵庫が、存在感を放っている。
「すごい……。これ、最新のやつじゃないの?」
「ふふふっ、奮発しちゃったー」
お父さん、本当に台所貯金いくら積んだのよ……。
「まさかこんなにいいもの買ったなんて思わなかったよ……」
そう言いながら冷蔵庫を開けると、チョコレートと生クリームが入っている。
「あれ? お母さんもなんか作るの?」
「えぇ、久しぶりにね」
まさかとは思うけど……。
「もしかして、彼氏でもできた?」
「やぁね、奇子ったら。私はお父さん一筋よ。せっかくだから、奇子と一緒に作りたいなって思っただけ」
お母さんはおかしそうにクスクス笑う。
「そっか、そうだよね」
安心した私は材料を冷蔵庫にしまうと、居間に行って炬燵に座った。
「外、寒かったでしょ?」
一足遅くに来たお母さんは、茶菓子やみかんをのせたお盆を持ってきた。茶菓子とみかんを並べると、ふたつの湯呑みを炬燵の上に置いて、緑茶を淹れてくれる。
「うん、寒かった。1月より冷え冷えとしてるよね……」
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