2月13日

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「こうも寒いと外出するのも億劫ね……。ところで奇子、彼氏さんとはうまくいってる?」 まさかこんなにはやく聞かれるなんて……。 「うん、うまくやってるよ」 「そう、それならよかったわ」 お母さんは穏やかに微笑みながら言うけど、私としては次に何を聞かれるのか、気が気じゃない……。 「よ、よし! さっそく作ろうかな!」 不自然なのは分かってるけど、あれこれ聞かれ始めたら困る……。私は台所に行くと、立派な冷蔵庫から材料を引っ張り出した。 「あらあら、せっかちさんね」 お母さんも冷蔵庫から材料を取り出して、私の隣に並べる。 私はポケットからレシピの走り書きを出すと、やかんでお湯を沸かし始めた。その間にミルクチョコレートを刻む。 「奇子は何を作るの?」 「ロッシェっていうお菓子だよ。溶かしたチョコに、マシュマロとコーンフレークを混ぜて固めるだけなの」 「美味しそうね、おこぼれが楽しみだわ」 「おこぼれもなにも、お母さんのぶんもちゃんと作るよ」 「あら嬉しい」 お母さんはにこやかに言いながら、チョコレートを手で砕いてバットに入れてる。 「そう言うお母さんは何作ってるの?」 「なんのひねりもなく、生チョコよ」 「えぇ、すごいよ。私、生チョコ作って何回も失敗してるんだから」 「奇子、省略しながら作ったでしょ?」 さすがお母さん、なんでもお見通しね……。 「だって、途中で疲れちゃうんだもん」 「お菓子は丹精込めて丁寧に作らなきゃ」 「……ごもっとも」 私が正論で打ち負かされていると、やかんがけたたましく鳴った。大きめのボウルにお湯を注いで、少し小さなボウルを浮かべる。 「奇子、湯せんはチョコレートを直接お湯に入れたらダメだからね?」 お母さんは茶目っ気たっぷりに言う。 「もう、分かってるよ……」 「途中でめんどくさくなって、お湯を入れたりレンジで温めるのもダメだからね?」 「そんなことしないってば」 私がほっぺたを膨らませると、お母さんは笑った。お母さんは、とってもチャーミングな人だと思う。
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