3人が本棚に入れています
本棚に追加
「こうも寒いと外出するのも億劫ね……。ところで奇子、彼氏さんとはうまくいってる?」
まさかこんなにはやく聞かれるなんて……。
「うん、うまくやってるよ」
「そう、それならよかったわ」
お母さんは穏やかに微笑みながら言うけど、私としては次に何を聞かれるのか、気が気じゃない……。
「よ、よし! さっそく作ろうかな!」
不自然なのは分かってるけど、あれこれ聞かれ始めたら困る……。私は台所に行くと、立派な冷蔵庫から材料を引っ張り出した。
「あらあら、せっかちさんね」
お母さんも冷蔵庫から材料を取り出して、私の隣に並べる。
私はポケットからレシピの走り書きを出すと、やかんでお湯を沸かし始めた。その間にミルクチョコレートを刻む。
「奇子は何を作るの?」
「ロッシェっていうお菓子だよ。溶かしたチョコに、マシュマロとコーンフレークを混ぜて固めるだけなの」
「美味しそうね、おこぼれが楽しみだわ」
「おこぼれもなにも、お母さんのぶんもちゃんと作るよ」
「あら嬉しい」
お母さんはにこやかに言いながら、チョコレートを手で砕いてバットに入れてる。
「そう言うお母さんは何作ってるの?」
「なんのひねりもなく、生チョコよ」
「えぇ、すごいよ。私、生チョコ作って何回も失敗してるんだから」
「奇子、省略しながら作ったでしょ?」
さすがお母さん、なんでもお見通しね……。
「だって、途中で疲れちゃうんだもん」
「お菓子は丹精込めて丁寧に作らなきゃ」
「……ごもっとも」
私が正論で打ち負かされていると、やかんがけたたましく鳴った。大きめのボウルにお湯を注いで、少し小さなボウルを浮かべる。
「奇子、湯せんはチョコレートを直接お湯に入れたらダメだからね?」
お母さんは茶目っ気たっぷりに言う。
「もう、分かってるよ……」
「途中でめんどくさくなって、お湯を入れたりレンジで温めるのもダメだからね?」
「そんなことしないってば」
私がほっぺたを膨らませると、お母さんは笑った。お母さんは、とってもチャーミングな人だと思う。
最初のコメントを投稿しよう!