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憎めない人だなぁと思いながら、刻みチョコの他にコーンフレークとマシュマロを入れると、ゴムベラでゆっくり混ぜ始める。
ちらりとお母さんを見ると、小さな鍋で生クリームを加熱している。鼻歌を歌いながら、鍋の中をかき混ぜている。
ご機嫌なお母さんを見るのがなんだか嬉しくて、私はリズムを刻むように、ボウルの中を混ぜた。
チョコレートが溶けて他の材料に馴染んだところで、私はバットにクッキングシートを敷いて、一口大に混ぜ合わせたチョコレートを落としていく。見た目はゴツいけど、きっと美味しいはず……。ゴツゴツしたチョコレートを冷蔵庫にしまうと、ボウルをお湯で洗って、ビターチョコレートを刻み始めた。
「奇子、まだ作るの?」
そう言うお母さんも、またチョコレートを砕いている。偶然にも、私と同じくビターチョコレートを。
「うん。その……、本命の方をね……」
あー、うん……。私ってつくづく自分の恋バナ苦手……。
「まぁ、素敵ね」
お母さんはそれだけ言うと、作業に戻る。
ありがたいことだけど、もっと根掘り葉掘り聞かれると思ったから、肩透かしをくらった気分。
私も作業に集中することにした。
お湯はまだまだあったかいし、海野さんひとり向けで量も少ないからそのまま。ボウルにビターチョコレートとコーンフレーク、マシュマロを入れると、私はまだ取り出してないとっておきの材料を冷蔵庫から出した。
「彼氏さん、大人ね」
お母さんは私が取り出したとっておきの材料、ラム酒を見て言う。
「うん、そうだね」
蓋を開けて瓶を傾ける。
「あっ……ああぁっ!?」
瓶は私の手から滑り落ちて、傾いたままボウルの中に入ってしまった……。
「やっちゃった……」
ボウルを傾けると、ラム酒の小さなプールができる。その上に浮かぶマシュマロひとつ……。
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