2月13日

6/7
前へ
/18ページ
次へ
「あらら、やっちゃったわね……。奇子、ちょっと借りてもいい?」 お母さんはボウルを指さす。 「いいけど……」 「ありがとう」 お母さんはボウルを手にすると、ヘラでボウルのふちをおさえながら、自分の鍋の中にラム酒を入れる。 「お母さんもたまには、こういう洒落たの使いたくなっちゃって」 お母さんはいたずらっ子みたいに笑う。 「ありがとね」 「どういたしまして」 ボウルに目を落とすと、ラム酒はだいぶ減ってるけど、それでもまだ多そう……。 「まぁいっか」 私は気にしないことにして、ロッシェ作りを再開させた。 海野さんのぶんを冷蔵庫にしまうと、一足遅れてお母さんも冷蔵庫にしまった。 「片付けは後にして、少し休みましょうか」 「うん、そうだね」 私とお母さんは、余ったミルクチョコレートを食べながら、お茶を啜ってテレビをつけた。 『今年は男性から女性に贈る、逆チョコが流行っているようです』 どうやらニュース番組らしく、若い女性アナウンサーが街頭インタビューを始めようとしているところだった。 「逆チョコですって。奇子ももらえるといいわね」 のんびりした口調で話すお母さんに、私は意を決して聞くことにした。 「ねぇお母さん、どうして恋人について、根掘り葉掘り聞かないの?」 お母さんはキョトンとした後に、声を上げて笑った。 「なぁに、聞いて欲しいの?」 「ううん、そんなんじゃないけど……。でも友達は恋人いるの親に知られたら、色々聞かれて大変だったって……」 「それが答えよ」 お母さんはお茶を啜る。 「え?」 「奇子は聞かれたら嫌なんでしょ? 私もね、若い時にお父さんのこと聞かれるのが嫌だったもの」 お母さんは目を細めながら言った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加