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「もちろんお父さんのことは愛してるし、恥ずかしいと思ったことなんて一度もなかったわ。でもね、他人の物差しで好きな人を見られるのは嫌で、その手の話は当時避けてたのよ」
「へぇ、そうなんだ……」
お母さんの話を聞いて、私が海野さんの話をするのを嫌がる理由が、はっきりした気がする。
「奇子が幸せなら、お母さんはそれでいいの。あ、でも、結婚する前には挨拶にいらっしゃいね」
「結婚って……」
その2文字に、顔が熱くなる。
「ウブね。お母さんはゆっくり待ってるから大丈夫よ」
お母さんの言葉にホッとして、この話はここで終わった。
それからしばらく雑談をしながら、チョコレートが固まるのを待った。
「そろそろかしらね」
お母さんに言われて時計を見ると、3時間近く経っている。
「そうだね」
私達は台所に行くと、それぞれチョコレートの確認やラッピングをした。
海野さんにあげるのは赤い箱に詰め込んで、それ以外は小さなラッピング用の袋に入れる。
「できた……!」
「私もできた」
お母さんの方を見れば、赤い箱と青い箱が並んでいて、その隣には小皿に少量の生チョコがのっている。
「これ、お母さんに」
私は袋に入れたロッシェをひとつ、お母さんに渡す。
「ありがとう。はい、こっちのが奇子ので、こっちのは彼氏さんに」
お母さんは赤い箱を私に、青い箱を海野さんにと渡してくれた。
「え、いいの? 海野さんのぶんまで……」
「へぇ、海野さんっていうのね。これからも奇子をお願いしますっていう、お母さんからのお願いチョコよ」
お母さんはそう言ってウインクする。
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