突然の電話

3/4
754人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
彼が実家を飛び出して行方が分からなくなった。 彼の母親は私が彼を唆(そそのか)して家出をさせたと思っていたらしい。 彼と私の年の差のせいか、母親の前でアッキーを叱りつけたからか、彼は私の言いなりだとでも思っていたのだろう。 そんなに自分の息子がバカだと思っているのか、母親ならではの親心なのか分からないけれど。 母親は私がアッキーからされた仕打ちを知らないから、彼が公務員を辞めたのも、自分で会社を立ち上げたのも、会社がうまく行かなくなったのも、全部を私のせいだと思っているらしかった。 私は、アッキーの事なんて知りたくも無かったから「知りません。私たちはもうとっくの昔に別れてます」と答えたけれど、彼女はなかなか信用しなかった。 私は、とっくの昔に彼とは終わったのだと言っても、私の方から彼と別れたんだと言っても、私は彼とはもう全く接点は無いんだと言っても信じなかった。 とにかく彼女は「敏明の行き先を教えてちょうだい」としか言わなかった。 この親にしてこの子あり、そんな言葉が頭に浮かんだ。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!