取り戻した日常

2/4
755人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
けれど、そんな私の穏やかな日々は、あの日突然、終わりを告げた。 彼らしき人を見かけたあの日から、私は毎日彼の影に怯えて暮らす様になった。 私は知っている。 アッキーの狂気を。 アッキーの私への執着を。 彼の元から逃げて、東京へ行って。 あれから十年も経っているのだ。 詳しい事は知らないけれど、彼はあれからも行方不明のままらしい。 だからこそ、不安なのだ。 今、住んでいるのは実家の隣の市で。 やっぱり実家から、もっと離れた方が良かったのか。 けれど、両親に何かあったら、すぐに駆け付けられる距離にもいたい。 そんな葛藤はあったけれど、私の結婚相手は私を思って、実家のある隣の市に新居を買ってくれたのだ。 毎日、特に何も無く平穏に暮らしている。 なのに、たまたまあの日いつもは行かない夜のケアに急遽、私が行く事になって、いつもよりも帰りが随分と遅くなってしまった。 そんな滅多にない日にアッキーに出会うなんて、偶然にしても有り得ない。 だからこそ、彼に見つかったんじゃないか?と言う恐怖で毎日ビクビクと怯えながら過ごしている。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!