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早朝の理科室。七時半。
あくびをかみ殺しながら第一理科室のドアを開ける。
「おはよう」
私に気付いて上馬場くんが顔を上げる。長めの前髪がサラサラ揺れる。
もうすぐしたら七月。
笹の葉サラサラ。
彼のサラサラ流れる前髪を見ていたらふと浮かぶ。
今日も爽やかな笑顔だ。
顔は整っていると思う。好みでないけど。
「…おはよう」
人間の義務として、挨拶を返す。
ニコッと笑うほどの元気がないのは私自身朝が弱いから…と、彼の前ではそういうことにしている。
ただでさえ色白だというのに理科室特有の黒い机で作業する上馬場くんは、青白く見える。
でも青白い顔に似合わず、二重の眼はギラギラと輝いていた。私は心の中で密かに彼のことを「理科変態」と呼んでいる。
近くの椅子に適当に座った。
指定カバンとその他諸々入っているサブカバンを机の上に置く。
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