理科変態

「見て」

今日の理科変態の実験は何でしょうか。

「見て」と言われたから軽く頷いて、とりあえず机の上を見る。

アルコールランプ。
マッチ。
濡れ雑巾。

そうそう。
火を使う実験のときは濡れ雑巾をきちんと用意しなさいって理科の先生に言われている。

私はまだ、彼と「おはよう」以外話していない。

それで十分だと思っている。
ちゃんと朝、上馬場くんに付き合って第一理科室に来ているし、挨拶もしているし、プリントだって届けているし。
義務は果たしている。

私がなぜここにいるかというと、今回の席替えで上馬場くんの隣、通称「ババ席」になったからだ。

上馬場くんは、多分不登校だ。

「多分」っていうのは、実は毎日学校に来ていて、滅多に使われない第二会議室で課題に取り組んでいるから。

みんなと同じ教室で一斉授業を受けてないだけで、登校はしている。
ちなみにそんな生活は中一から始まっていたらしいので、中三の現在、三年目に突入したことになる。

今回の初めて同じクラスになった私としては、過去の流れはよく分からない。