14人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「あ。ありがとう」
窓際に立っていた長身の男子生徒が返事をした。
見たことあるようなないような顔。くっきり二重。色白。髪がサラサラ無駄にきれいというのが第一印象だった。手にはなぜか手鏡を持っている。
「いつもプリント持ってきてくれる子?」
「・・・」
この彼が「上馬場くん」本人か分からないから返答に困った。プリントは毎日届けているけど「上馬場くん」にであって、この「彼」にかは自信ない。
「…彼が上馬場くんです」
私の気持ちを読んだのか、三つ編みの女子生徒が控えめに教えてくれる。
グッジョブ、三つ編み少女。
「そうです」
とりあえず答える。
プリント届けてるのは事実だ。
にこにこ笑顔。人懐こい感じ。
気難しそうで表情の暗い「上馬場くん」を勝手に作り上げていた私としては驚愕の事実だ。
イメージと違う上馬場くんが軽やかに私の方に歩を進め、優しくてきれいな声で告げる。
「頼みがあるんだけど」
やばいと頭の中で赤いランプが点滅しながらクルクル回る。
私にとって一番面倒くさい瞬間が来た。
逃げればいいのに、逃げられない。
「明日の朝、実験に付き合ってくれない?」
最初のコメントを投稿しよう!