理科変態

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「あ。ありがとう」 窓際に立っていた長身の男子生徒が返事をした。 見たことあるようなないような顔。くっきり二重。色白。髪がサラサラ無駄にきれいというのが第一印象だった。手にはなぜか手鏡を持っている。 「いつもプリント持ってきてくれる子?」 「・・・」 この彼が「上馬場くん」本人か分からないから返答に困った。プリントは毎日届けているけど「上馬場くん」にであって、この「彼」にかは自信ない。 「…彼が上馬場くんです」 私の気持ちを読んだのか、三つ編みの女子生徒が控えめに教えてくれる。 グッジョブ、三つ編み少女。 「そうです」 とりあえず答える。 プリント届けてるのは事実だ。 にこにこ笑顔。人懐こい感じ。 気難しそうで表情の暗い「上馬場くん」を勝手に作り上げていた私としては驚愕の事実だ。 イメージと違う上馬場くんが軽やかに私の方に歩を進め、優しくてきれいな声で告げる。 「頼みがあるんだけど」 やばいと頭の中で赤いランプが点滅しながらクルクル回る。 私にとって一番面倒くさい瞬間が来た。 逃げればいいのに、逃げられない。 「明日の朝、実験に付き合ってくれない?」
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