理科変態

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朝七時半。第一理科室。 上馬場くんに告げられた日時はなかなかえげつない。 うちの中学校は朝八時までに登校がルール。 七時五十分くらいに着くようにしているから、いつもより早く家を出ないといけない。 断る言葉を探しているうちに上馬場くんはふわっとどこかに行ってしまって断れず。 今日こそ断ろうと思っているうちに五日経過。 自分の性格がつくづく恨めしい。 「理科室の机ってさ」 彼の喉仏が動くのをぼんやり眺めた。 声変わり。 してるんだろうけど、きれいな声。 「黒いのには理由があって、白っぽい粉や透明の液体をよく使うからこぼれてもよく見えるように黒いんだって」 知らなかった。 上馬場くんの雑学に静かに感心している間に、アルコールランプを開けてその中の液体を机の上にこぼしていた。 「ほら、よく見えるでしょ?」 にこにこ笑顔で自慢げに言う彼に若干引いた。 確かによく見える。 しっかりこぼれているのが見える。 この人やばい。 「あとこの机ってさ」 マッチを手際よく擦ると火が点いた。 嫌な予感がする。 瞳に赤い色がユラユラ映りながら口元が緩む瞬間を確かに見た。 国語で習った「恍惚」って、多分これ。 絶対これ。 理科変態は火の点いたマッチをそのこぼれている液体に向かって放り投げた。
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