理科変態

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炎が上がった。 比喩なんかじゃなくて、本当に上へ上へと上がった。 「ちょ、ちょっと!」 思わず声をあげる。 彼は楽しそうに両手を上げて謎のステップ踏んでる。 何この人と思う暇もないくらい、思考が停止。 理科変態はダンスを辞めてにこっと余裕の表情を固まっている私に見せる。 そして濡れ雑巾二枚を広げて炎の上に被せた。 すると手品みたいにシュルシュルシュルっと炎が小さくなる。 アルコールの匂いがきつい。 理科変態は濡れ雑巾二枚を白い手で抑えて、火事現場となった場所をゴシゴシ擦る。 「火が点いても燃えないんだよ。すごい机じゃない?」 燃えた跡は見当たらない。 いつもと同じ黒い机だ。若干濡れ雑巾のせいでテカテカ反射してるけど。 「じゃあ今日の実験はここまで。また明日ね」 授業終了の挨拶みたいに頭を軽く下げてから、くるりと背を向けて彼が片付けを始める。 全く予想だにしなかった炎を見たことで、朝から疲労感が半端ない。 時間を見るともうすぐ八時だ。 教室に行かなくちゃ。 カバンたちを持って第一理科室を出た。 教室までの廊下でふと気づく。 また今日も断れなかった・・・。
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