板挟みチョコ

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「じゃあ、頑張れよ」 帰りの会が終わって、校門前。陽樹は、既に「おまえと違って人の告白をみる趣味はない。」と言い切り、公園には来ないと告げていた。 「ああ。なんとかするわ。じゃっ」 言いたいことは、他にもあったが、何分(なにぶん)修也は、告白する側。美鈴よりも早く公園に行かなければならないという紳士的使命感に駆られるのも当然であるだろう。すぐさま修也は、雷電よろしく走って家に帰り、隠して置いてあったチョコレートを取り出してすぐに自転車を走らせ、音速よろしくでスズシオ公園に到着した。 息を切らすのもつかの間。美鈴が来ていないことを確認し、ブランコ付近で待つべきか、はたまた滑り台に座っているべきか、いっそ砂場に立っていようかなど、考えつつ、冷たい冬の風にさらされながら、あまり暖かいと感じない太陽を浴びつつ、修也は、J-POPを鼻で歌いながら美鈴を待っていた。 修也が待った時間は、午後の3時から5時間。午後8時まで待った。修也がこんなにも待ったのは、決してロマンチックな理由があるわけではない。 美鈴が、来なかったのだ。2時間待って疑い始め、4時間経って夢が覚めていくような、やるせない感情が芽生え始め、5時間後には、ついに諦めて家に帰った。 玄関に上がると、修也の父と母からこっ酷く怒られかけたが、修也の手に持ったチョコレートとやや半泣きの修也を見て、「あんっっっっ!」と言った後、思わず何も言えなくなってしまった。10秒ほどして、父が「明日は学校休め」と言ったため、修也はそれに甘えた。 翌日、修也は、地蔵さんみたいに固まって何も考えずに家で生活をしていた。
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