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人間牧場
国立感染症研究所の所長室。
俺は所長に拳銃を向ける。照準は右目。
「答えろ。なぜデータを偽造した。お前の目的はなんだ!」
所長は相変わらずなにも言おうとしない。極端に小さい口を金魚みたいにパクパク動かすのみ。
銃口を下にずらす。
「今俺の銃は、お前の心臓を狙っている。俺の射撃の腕はこの国で十の指には入らずとも二十には確実に入る。今から十秒以内に答えなければ、お前の心臓は確実に射貫かれるぞ」
こう脅しをかけても、所長は顔色一つ変えなかった。普通は銃向けられたら少しは動揺するものだが。所長は相変わらず爬虫類みたいな目で見つめるのみで、心ここにあらず、といった感じである。
俺は溜息をついて、拳銃を下ろした。銃を腰のケースに戻し、手袋をはめる。
「どうやら銃で脅してもお前には意味がないようだな」
そう言うやいなや、俺は素早く所長の手を掴む。
「握手、のほうがいいかな?」
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