ヴァーチャル・リアリティ

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「えっ、まじで。急にどうしたんだ、あんなに抵抗してたし、てっきり今日も有耶無耶にするものだと・・・」  悠人の素っ頓狂な顔を少し見て、そこでようやく俺は後ろに向き直った。遠ざかって行く駅のホームと、そこに取り残された昨日までの俺に一瞥くれるために・・・ 「慎士、何見てんのさ。忘れ物でもしたの?」 「いや、置いてきたんだ。」 「え、どういうことそれ?」  もしさっき、こっちを選んでいなかったら、明日も明後日も明々後日も同じことを繰り返していた、きっともうこっちに来ることはできなかったような気がする。これが最後のチャンスだったんだと、なんの根拠も無いが今こっち側に来てなぜかそう思った。 「なあ悠人。」 「んっ、え?」  さっきまでキョトンとしていた悠人は我に返ったみたいにビクつく。 「ありがとな。」 「えっ、慎士が俺に感謝!?」  そして今度はあっけにとられたような表情をした。つくづく感情の起伏が激しいやつである。 「おかげ様であんたの親友は前に進めそうだからその礼を言っただけだ、何がおかしい?」 「あ、ああ、それはどういたしまして。」     
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