ヴァーチャル・リアリティ

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 やっぱり、今の俺はちょっとおかしいみたいだ。なんとなく自分でもわかる。でも、人が変わる時って案外こんなものじゃないか?高校デビューって言葉があるみたいに、人は何かを堺に大きく変わるんだ。 「もしフラれたら慰めてくれ。」 「おう、膝枕しながらヨシヨシしてあげるよ。」  男の膝枕なんて死んでも嫌だな。女になって出直してこい。あ、そういや・・・ 「お前さっき、月島菜々子って言わなかったか?」 「うん、言ったね。」 「それって、もしかして二組の?」 「うん。」 「ま、まじか。」 そりゃあ他言無用になるわけだ。言えるわけないよな、だって二組の月島菜々子っていったら・・・  キーンコーンカーンコーン ・・・ 一時間目終了のチャイム。一時間弱の拘束から解放された勤勉な生徒も、一時間弱の仮眠をとっていた怠慢な生徒も、皆背伸びをしながら「ぬあぁ・・・」と唸った。それをはじめに教室内が徐々に騒がしくなり、一瞬にして休み時間の空気が完成。仲のいいもの同士で群れをなしたり、英語の単語帳を開いてなにやら諳んじたり、二度寝を始めたり、休み時間の過ごし方は三者三様ではあるが、個々人の行動パターンに関して言えばいつも同じだ。 そのわかりやすい例が俺の前の席でたむろしている男子三人組である。一日の最初の休み時間に関してだけ言えば、冒頭のセリフすら決まっている。     
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