ヴァーチャル・リアリティ

10/37
前へ
/87ページ
次へ
「俺、朝から月島さん拝めたから、今日は一日授業受けれそうだわ。」  そらでた。毎朝恒例、アイドル目撃情報の共有。三年に上がってから今まで全く絶やすことなく行っているが、よくも飽きないものだ。あと、拝めなくても授業はちゃんと受けろ。 「俺なんか挨拶したらお辞儀してくれたぜ。可愛かったなぁ~。」  そりゃ社交辞令だ。  ちなみに月島が学園のアイドルとして崇拝されるようになったのは今年に始まったことではなく、実際入学から一ヶ月経った頃には学年の男子の半分が月島ファンになっていた気がする。男子界隈では『みんなの月島さん』と囁かれていたのでてっきり誰も手を出していないものだと思っていたし、彼らに関してはまだそうだと思いこんでいるだろうが、実は彼氏は二年前からすでにいて、その相手が東悠人だという驚愕的新事実を、俺は今朝、悠人本人から聞かされていた。この様子じゃ、付き合っていることをひた隠ししていたのは懸命な判断だったと言えよう。 「ずるいぞお前ら、俺は今日一度も見てないんだぞ。」 「お前は彼女いるじゃないか。」 「ほんとそれ。」 「何言ってるんだ、彼女とアイドルは別腹だろうが!」  それこそ自分が何言ってるかわかっての発言なのだろうか・・・ 「確かに、理想と現実は違うよね。」     
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加