2人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
ヴァーチャル・リアリティ
「待ってくれ。」
昼下がり、学校の帰り道。気が付くとバスに乗ろうとした彼女を俺は引き止めていた。
言わなきゃいけないことがある。たぶん今を逃せば一生後悔する。なんとなくそんな気がしていた。
彼女の片足は既にステップの上に乗り上げていた。間もなく二本目の足が着陸するという寸前だったが、なんとか間に合ったようだ。元いたアスファルトへと緊急着陸した。
ひとまずのところは安心だが、しかし、なんと言ったらいいものやら。衝動的だったもんだから、このあとのことは正直なにも考えていない。
その時、バスの扉が大きめの溜息でもついたような音と共に閉まり。重たい身体を唸り声上げながら走らせていく。
「なに?」
ふと、彼女が目の前にいた。
白いブラウスに紺色のベスト、灰色に白と紺の格子が入った飾り気のないプリーツスカートを身にまとった少女が気だるげな表情で立っている。しばらく彼女を見つめて、俺が抱いた言葉は、その、おかしな話なんだが・・・
「誰だ?」
最初のコメントを投稿しよう!