ヴァーチャル・リアリティ

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『・・・ニュースのお時間です。昨日から、ヴァーチャル・リアリティ、通称VRを用いた仮想現実体験型アトラクションを楽しめるVRワールドが都内でオープン。初日の会場者数は三万人と、予想を遥かに超えるものとなりました。』  二階の寝室から一階のリビングに降りると、テレビ画面にゴーグル型のゲーム機が映し出されているのが見えた。 「へぇ~、ついにゲームもここまで来たか・・・」  と、茶碗片手に感心しているのは母。御年四十五歳であり、それはゲーム機の進化を初期からリアルタイムで見てきた故の感想なのであろう。 「母さんがあんたくらいの時は、白黒だったのよ。」 「あーね。」  生返事をしながら長方形のテーブルの前にしゃがみこむ。 「いただきます。」 「はいどうぞ。」 しかしまったくその通りで、やっぱり現代技術の進歩は早い。二、三十年前モノクロドットだったゲームも、今やヴァーチャル・リアリティなどという壮大な名が付けられるようにまでなるのだから。 そう考えると、全身の感覚を支配するような、本当に現実と錯覚してしまうようなゲームが登場するのもそう遠い未来の話ではないような気がしてきた。とはいえ、そこまで行くとゲームも単なる娯楽ではなくなることだろう。第一、痛みを伴うゲームなんて誰がやるというのか。いや、案外今の戦争を知らない血に飢えた若者たちはそういう刺激を求めているかもしれない。まあ俺もその若者なんだけど・・・     
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