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「そのニュアンスでいくならオネエ口調で言ったことになるだろ。」
「あ~あ。二年間も隠していたのにとうとう言ってしまったよ。でもまあ、これで親友が前に進めるなら本望だけどね。」
やっぱり狙いはそっちか。良い奴風なセリフを吐いても無駄だ。口元がヒクついているのが見え見えだ。
だがさて、どうしよう。理由はともかく、こいつが俺の後押しをしてくれていることには変わりないわけだし、ここまでされて逃げるのも男が廃る・・・いや、そもそも男が廃るってなんだよそれ、ただのプライド高い不器用な奴が言うセリフじゃないか。
俺が考えを巡らしていると、踏切の警鐘音がなんの遠慮もなく鳴り始めた。山間の狭いホームに録音された電車到着のアナウンスが反響する。
内心好都合だと思った。乗車に乗じて話を有耶無耶に、しかしそう考えたのも刹那。停車際、漸次正面に近づく扉の窓、そこに映った自分があまりに情けなく見えて、恥ずかしいとまで感じ、自分の姿が開く扉とともに消えていくのを見届けるや、無意識に心の中で呟いた。
ダッサ・・・
だから発車のブザーが鳴り、後ろで扉が閉まる音がした時、俺はもう一度そいつに振り返ろうとはせずに、むしろ嫌味のように言った。
「俺、今日あいつに告白するわ。」
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