壱  鏑城聖 生還

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「聖君って変わってるね」  そう、クラスメイトに言われたことがある。聖は否定できなかった。  いつでも地獄のことを考えてる人間をまともとは言えないだろう。  だけど、どうしようもなく、気付けば彼女のことを考えていた。  きっと下手に付き合っていつも一緒にいるカップルなんかよりよほど思いが強かった。離れればこそわかる大切さ、二度と会えないとわかっているからこそ、燃え上がる恋。  それはある種、ストーカーの心理にも近かったと思う。  拒絶されればこそ追い求めたくなるように。  運命が邪魔をする方が思いは強くなる。  ましてや両思いでありながら引き離されるともなればストーカーよりもタチが悪く、思いは消えることもないだろう。  さながらロミオとジュリエットのように。 『ロミオとジュリエットも家の事で確執無ければ案外普通に付き合って普通に別れたんじゃねーか?』  胸の中で彼女がそんなことを言う。  うん、まあ確かにケイならそう言うだろうな。  クスッと笑みを漏らす。  周りの目は冷ややかだった。  当たり前だ。何もないのに一人でニヤニヤしたり時には声をあげて笑う。彼の中にはケイがいても誰にも見えないのだから。  世間は変人に寛容だ。意外なほどに。  だが、時に世間は排他的だ。特に学校と言う隔離空間では。
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