壱  鏑城聖 生還

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 不慮の事故、なんてのは素晴らしく使い勝手のいい言葉だと思う。  使い勝手が良く、勝手に使われる。  実際のところ、冬威の死が不慮の事故でないことを知っていたのは、聖だけだったと思う。  大人の事情、  世間体の確保、  良いおうちの、良いおうちでありたいが故の、  嘘で嘘を塗り固めた既成事実。 「・・・(死って・・・、案外身近なもんだな)」  大袈裟なまでに豪奢な葬式で、  遺影でまで不敵な笑みを浮かべた冬威を見上げ、聖はそんなことを思った。
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