金曜日

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先にシャワーを浴びた英司が戻ってきて、足元に気をつけて、と言って着替えを渡してくれた。 階段を上って、カーテンのない大きな窓に近づいた。海の向こうの灯りが、雨に滲んで見えた。洗面所で歯を磨き、バスルームのドアを開けて中を覗くと、リビングと少し角度が違う窓の外は、暗闇だ。 僕は部屋に戻って照明を全部消してから、重いガラス窓をなるべく静かに開けた。バルコニーに片足だけ踏み出すと、潮の匂いが鼻をつく。タイルに当たる雨音が優しく静かに響いて、目が慣れると、少し傾いて空から降る雨の様子が見えてきた。 そのうち遠くに目をやって、暗い海に光が反射して、水面がところどころで白く揺らめくのを探していた。白い光は、キシの目の中のあの光だ。さっき橋で見た、流れるランプの列も。 僕はうなだれ、目を閉じた。冷気を含んだ潮風に運ばれる生暖かい空気が、少しずつ皮膚を湿らせていった。 どれくらいそこに立っていたのか、ズボンのポケットでスマホが振動して、驚いて小さく飛び上がる。 奇妙な予感とともに引っ張り出すと、キシからの電話だった。バイブレーションが終わって留守番電話に切り替わってからポケットに戻し、窓を閉めて、バスルームに向かった。     
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