金曜日

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「二階の窓を開けてた?」 「うん、あ、ちゃんと閉めたよ」 「何も見えないでしょう」 「なんか、海が光って見える」 英司は、横から僕の顔を覗き込んだ。 「何で泣いた?俺が嫌なこと言ったから?」 「…泣いてないけど」 「泣いた顔だよ」 頭に置かれた彼の手を掴んで、手のひらにキスした。さっき使ったシャンプーの匂いがして、湿っている。 彼は、その手をもう一度僕の頭に置いて、 「会うのは、これで最後にする。でも、いつでも電話してくれていいから」 と言った。 「…最後って。もう別れてるのに」 英司は、僕が首に掛けているタオルを取り、両手を使って美容院でやるように、僕の髪を拭き始めた。 「昔の男が戻ってきた時は、君から会いに来ると思ったから」 例の沈んだ声だった。 「待ってた。未練というか、ね。今日、ここに連れてきたから、これでもう」 タオルを丁寧に畳んで脇に置いてから、英司は僕の肩を静かに抱き寄せた。僕は彼の胸に顔を押し当てた。 「君の言う通り、セックスしたいと思ってたけど、やっぱりやめよう」 「していいよ」 「言うと思った。でも、俺はしない方がいいな」 「…そうなの?それなら、何でここまで来た」 英司はなだめるように、僕の腕を撫でた。     
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