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「君が二階で海見てたのが、ずっと忘れられなかった。子どもみたいな顔で」
「…」
「空とか海とか、何やらそういうのをじっと見る子だと思ってて…でも、あまり外で会ったりできなかったからね。振られたけど、ここはいい思い出なんだよ」
顔を上げようとしたが、英司は僕を抱いた手に力を込めた。
「少し、こうしてて」
「…」
「…明日、海見えるといいね」
僕をあんな風に狂わせるのはキシだけで、キシがいたら、他に何も、誰も要らなかった。でも、キシはいなくなった。
英司がまるでキシと似ていないことに、僕は今さら気づく。
顔を見たら泣きそうで、目を閉じたままじっとしていた。泣けば、英司は慰めてくれるだろうけど、僕はそんな優しさには値しないから。
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