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火曜日
近所を走った後にシャワーを浴びて、下着だけでベッドに寝転がった。髪が濡れているので、ヘッドボードにもたれて。
ベッドに投げ出した自分の脚を眺め、膝を立てる。ふくらはぎの裏から上へ向けて、両手で触っていった。見た感じはそんなに変わらないが、触ると以前より引き締まって、皮膚のすぐ下に触れる筋肉が硬く感じられた。
太ももから下着を撫でるように触った。
キシのことを考えないようにしていたが、そのこと自体に疲れて、限界だった。結局、濡れた髪を枕に押しつけ、下着の中に手を突っ込んだ。
やさしく唇を噛まれたほんの一瞬の感覚を呼び起こすだけで、もう呼吸が早くなって、首に掛けているタオルを取った。
何のためらいもなく、よく知っているという感じで唇を割って入ってきた柔らかい舌と、その後で耳に響いた鼓動の速さがちぐはぐな印象で、それを思い出すと心が揺らいだ。
他の人と寝ないでと釘を刺した時のちょっと不思議な表情や、片手で僕を引き寄せた時の力強さ。
いい子にしていて、という静かな声。
「図々しい」
僕は声を漏らす代わりに、つぶやいた。
キスしていい?と一応聞かれたけど、返事をする時間はなかった。僕がだめと答えるのがわかったから、答えさせなかったのだ。ばかめ。だめに決まってる。
「あっん、んん…」
口を引き締めたが、声が出てしまい、激しく射精した。両脚が震えた。いつまでも続くような気がするやつだ。頭が真っ白になるやつ。
一人ですると、終わった後で嫌な気持ちになる。だから滅多にしない。セックスの後の、胸に穴が開いて息ができなくなるような感じの方がまだましだった。
背筋を走る寒気に似た嫌悪感を振り払って起き上がり、部屋着を着た。バスルームの洗濯かごに、下着とタオルを放り込み、廊下に出たところで青い傘が目に入る。シューズラックにしまったり、捨てたりすることはできないまま、玄関のドアの脇に立てかけてある。
廊下の電気を消し、寝室に戻ってベッドに突っ伏した。
涙が滲んだが、泣くのは嫌だった。
嫌な気持ちは、虫が這うようにまだ体の表面に残っている。
しばらくして、英司に電話をかけた。留守電に切り替わったので、そのまま切った。
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