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「え!? 黒魔女さんが、学校にいた!? いつよ!」
「今日の三限……」
「ふーん。そう、よかったじゃない。……でも授業を受けてたってことはここの学生?でもそれなら……」
「お前が知らないわけがない」
「……うぬぼれかもしれないけど、うちの学科の授業受けてる学生なら、わかる自信はある」
「だろうな。お前はそこには自信もっていいよ」
「じゃあ、社会人枠……とか?それでも、ある程度取ってる授業がかぶってるはずだよね」
頭を掻きながら歩き回る南。
今の状態だと何を話しかけても多分聞いてくれない。というか、聞かない。
「僕は僕で彼女を追う」
「追ってどうするの? 告るの?」
……こういうのはちゃんと聞いてるのか。
「それは……わからない」
「理人のことだから、話しかける勇気もないんでしょ」
……お前に僕の何がわかる。たかが幼馴染の分際で。
「……さあな。僕は帰る」
いつもなら気にせずにいれた南の言葉がなぜか耐えられなかった。
こんなにも僕は子供みたいな人間だったのか?情けない。こんな姿じゃ、きっと幻滅されてしまう。僕は変われるんだ、変わるんだ。彼女がいるから。
僕は、南の顔を見ることなく部室から出た。
通路の真ん中を突っ切っていく。
あぁ。気分が悪い。僕はとても気分が悪い。
携帯から目を離さずに歩いてくる若いサラリーマン。肩がぶつかったのに謝らない。
ベビーカーで横に並び狭い道を歩く若い女性。道をふさいで邪魔なうえに歩くのが遅い。
寝てて僕に寄りかかってくる同い年くらいの茶髪の男。重い、うざい、触るな、当たるな。
すべてにイライラする。
改札の扉が閉まる。
「もう一度タッチしてください」
なんだ。なんなんだよ。なんで嫌なことは連続に積み重なるんだ。幸せなことはそんな簡単に積み重なってくれないのに。
僕だけなのか?そういや南はいつも幸せそうだ。なんの悩みもなさそうだ。
「今日はもう嫌だ。さっさと家に帰ろう」
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